実績
学術系メディア | SYNODOS
メディアとしての厚みを残し、複数の取り組みを動かせる構造へ
研究者・専門家による記事を蓄積してきた学術系メディア、SYNODOS。多様な取り組みが広がる一方、旧サイトでは単一の記事構造が成長を制限する要因となっていました。築いてきたメディアとしての価値を保ちながら、取り組みごとに施策を展開できる構造へ組み替えたプロジェクトです。
メディアとしてはすでに確立していた
SYNODOSでは、研究者や専門家による記事が継続的に公開され、多彩なテーマに誘引される厚い検索流入がありました。リテラシーの高い固定読者もついていました。
オピニオン記事を中心とした枠組みから始まったSYNODOS。長期の運用の中でWordPressを巧みに使いこなしながら、書評やイベントなどへコンテンツの幅を広げ、旧サイトは、学術メディアとして大きな問題なく運用されていました。
その一方で、取り組みはさらに広がろうとしていました。新たな教育事業も始まり、それぞれの活動を個別に展開していく必要が高まっていきます。記事を中心に発展してきた既存の枠組みが、次の展開に対して少しずつ窮屈になり始めていました。
個別の取り組みを展開させる仕組みが必要だった
オピニオン記事の枠組みとして開発されていた旧サイトでは、機能や役割の異なる取り組みも、基本的には同じ記事テンプレート、同じ記事一覧の中で展開されていました。
カテゴリも存在していましたが、それは「政治」「社会」「文化」など、記事の内容に基づく分類で、読者は書評だけを選択的に読む、最新のレクチャーイベントの情報を追う、といった取り組みごとの入り方はしにくい状態でした。
編集部側から見ても、新たに始めた教育事業を独立して訴求したり、それぞれの取り組みに合わせた導線設計をしたり施策を立案したりするにも、既存の枠組みでは自由に展開できない。
一つのメディアとして多彩な展開を続けてきたSYNODOSは、それぞれの取り組みに固有の枠組みを持たせることが、次の打ち手として必要になってきました。
当初の依頼は、複数の柱をトップで訴求すること
当初の相談内容は、収益性向上を視野に、オピニオン記事中心に見えているサイトトップの構成を見直し、メルマガ、英語事業、書評、イベントなどの取り組みを、それぞれ独立した柱として立てるというものでした。
それらを複数の柱として見せ、さらなる事業拡大を見据えた、より自由度の高いハブとして機能させる。そうした一般企業然としたトップページの構成が想定されていました。
ただし、前段で見た通り、旧サイトでは個別の取り組みごとの入り口、入れ物が構造として分かれていません。トップで独立した柱として主張しても、その先で再び同じ記事構造の中に戻ってしまいます。
加えて、企業然としたトップにすることで、今まで積み重ねてきた学術メディアとしての価値を希釈してしまう恐れがありました。
展開は多様でありながら、学術・教養という一本太く通った幹を維持し、そこから新しい取り組みを伸ばしていくこと。それが、さらなる飛躍の基礎としても重要であると考えました。
企業としての信頼感を持たせ、複数の取り組みをトップで見せることは可能ですが、それぞれを継続的に動かしていくには、トップページの構成だけでなく、コンテンツを格納する領域まで再設計する必要がありました。
メディアとしての横断的な統合感を残しながら、取り組みをそれぞれ個別に展開できる構造にする。これがこのプロジェクトの課題となりました。
取り組みごとの手応えを、次の施策に生かせなかった
それぞれの取り組みは外部サービスを通じて個別に収益を把握できており、取り組みごとの収益状況やその違いも見えていました。
一方で、その状況をもとにサイト上の施策を取り組みごとに変えることは容易ではありませんでした。同じ記事構造の中に複数の取り組みが存在しているため、伸ばしたい取り組みだけに入口を増やす、導線を変える、見せ方を組み直すといった展開にも制約があります。
複数の取り組みを柱として育てていくためには、それぞれをサイト上でも個別に扱い、状況に応じて異なる施策を仕込める構造にする必要がありました。


既存コンテンツ群を、新しい構造へ編み直す
既存の大量の記事を整理し、それぞれ個別に設計・デザインした新しい構造に収め直していき、サイトの中で、SYNODOSの各取り組みに対して最適な施策を個別に判断を下していける仕組みを作る。
採るべき施策は明確でしたが、超えるべきハードルは多数ありました。
時事、哲学、政治、時に自然科学と、縦横無尽に問題を切ってきたメディアサイト。対象となる記事は2,000本を超えるボリュームです。
その分類、配分は通常のデータベースのエクスポート、インポートでは対応できません。
CSVでそれぞれのコンテンツデータを細かく整形しながら、新しい構造の中に収めていきました。
また、新しい構造の中で各記事・コンテンツのURLは変わってしまうため、すべての記事にリダイレクト処理を行いました。これは、積み上げてきた検索流入を維持するために必須でした。
これまで「記事」として同じリストに並んでいたコンテンツを、それぞれ独自の新たな構造の枠組みに収め直していく作業。それは、既存コンテンツを要素一つひとつ、再定義していく作業でした。
メディアとして統合し、取り組みとして分離する
設計で重要だったのは、多彩な取り組みを分離することだけではなく、SYNODOSというメディアらしさを保ちながら、それぞれの取り組みに、独立した役割を持たせ、動かせる状態にすることでした。
すべてを記事の流れの中に埋もれさせることなく、メディアとしての横断的な統合感を残しながら、それぞれの取り組みを個別に扱い、相互に接続しながら運用できる仕組み。
コンテンツの蓄積を生かし、その上に複数の取り組みを重ねていく。
これが、この案件で必要だった構造でした。
英語事業は、記事内の告知から独立した入口へ
英語事業は、この構造変更の後、「英会話コーチング」としてより独立した取り組みとして前面に立つことになります。
旧サイトでは、英語事業も新しい取り組みでありながら、サイト上では他の記事と同じ流れの中に埋もれていて、既存記事の読者に対しても、純粋に英語に関心がある新しい利用者に対しても、英語事業を独立した目玉として見せることはできませんでした。
今回の設計では、英語事業を単なる記事内の告知にとどまらず、SYNODOSの中にある独立した取り組みとして扱えるようにしました。
メディアに蓄積された知的な文脈と接続も可能にしながら、同時に、英語事業として独自に読者を受け止められる入口を持たせる。これにより、英会話コーチングは、後続のLPや募集施策へ接続しやすい状態になりました。
トップページの整理ではなく、扱う単位を変える
このプロジェクトは、トップページの整理の依頼から始まりましたが、最終的に記事として同じ場所に並んでいた複数の取り組みを、それぞれ個別の単位として扱えるサイト構造へ組み替えたプロジェクトとなりました。
必要だったのは、メディアとしての価値を大切にしながら、取り組みごとに分けて運用し、判断できる状態をつくることでした。
Webは、記事を並べる場所から、複数の取り組みを育て、見直しながら、新しい施策を試行していくための基盤へ変わりました。
※本記事は、当社が担当した企画設計・実装時点の課題定義と構成内容をもとに作成しています。
公開後の運用・追加改修により、現在の状態とは異なる場合があります。